光
家路はすれ違う人々の、
何気ない仕草へ意味をあたえる。
気持ちがいいね
ぼくは瞳のなかへ溶け込んで
鏡面に出欠確認の合図
窓を叩く翼を欠いた鳥の群れ
蟋蟀は鼓膜の表面で眠る
くらい階段を登って
花壇に乳歯を埋めたら
さびた釘は拳のなかへ
ぼくを見下ろすあかい末路
声はとても高いところから降る
紙の擦れるおと
破かれた答案用紙をまなざして
吹き抜ける風に車が運ばれてゆく
鮮やかな黒鉛筆のやわらかい芯は
花ひらく永久歯に砕かれ
なんとも無関心な洗濯日和がやってきた
太陽を讃えるために歯を磨きます
正面に浮かぶ発光体は
ぼくの動きを真似して
あかるい顔が浮かぶ
密室に泡立つ生命の起源
ぼくを形成する細胞は沸騰し
もういちど影絵にあらわす
壁に凭れるぼくの身体
雨乞いをしたら雨が降ること、
ツツジを咥えてしんだ子供、
砂を噛む苦い舌、
ぼくのすべて。
なくなる