光入力/失敗

大気がない

フィクション

住宅街をゆく
ひとの声がない
かわりにきこえてくる
調律狂いのピアノ
割れたリコーダー

あかぎれのゆび奏でる
鍵盤たたく少女は少女のなかで
画面に見切れた自分の姿を見つめる
あれたくちびる奏でる
神経質なほそいゆび動かし
吐息もれる少年は少年のなかで
画面いっぱいの自分の鼻を見つめる

撮影した街の日常

住宅からきえたひとを追って
ぼくはあたえられた役を演じる
台本から台本へ投げかける言葉ひとつ
一字一句誤りはなかった
乱れた呼吸をさいごに
おつかれさま

だれもさよならを知らない

ところできみ、
抜け落ちた音声を
拾ってきてくれないか
映像は問題ない
ただ、音が不自然だから
もっといきものが嘘をついて、
生活をしていると錯覚するくらいに、
あと、光の調整を怠るな
影が実体に憧れると面倒だ

ここが終着
そして、はじまり
整列した墓石を俯瞰する
壁に囲まれたひとつの街
鳥類は退化する
翼を腕に還元(諸説あり)
では、人類はどうする?
とりあえずまあるく、
まあるく、
ころがる、
回転して、

踏みつぶされた

おまえの日常
どうかしてるよ