光入力/失敗

大気がない

リリカル・プラザ

自分がどうして薬を処方されているのかわか
らなくなるときがある。わたしは健康だった
し、いつも笑っていた。わたしがわたしであ
る以上、他人がいてもおかしくはない。でも、
対人ってこわいよね。接客っていつも丁寧だ
けど、そんなことありえなくて、厨房で泣い
ているよ。陽気な帰り道、家に着いてしっか
りと傷ついて、お風呂に入れない日が何日か
つづいた頃、わたしはわたしでなくなってい
た。湯船の底でわたしの体温と同じひとに出
会う。みずいろの球体が胸のあたりで堰き止
められて、部屋のなか浮かぶ身体。誰も知ら
ないわたしだけの音、みんな叫んでいる、わ
たしを実験台にしたあの子も、教科書を貸し
てくれたあの子も、わたしになんの関係があ
るのだろう。

あなたはわたし以上に、
わたしのことを考えない
わたしは一喜一憂するけれど、
あなたは何も知らずにしんでゆく
何もかも迷惑だ、わたしみたいなひとを
ヒガイモウソウって呼ぶんだよ
どうしてひとを憎めますか
どうしてひとを恨めますか
傷つけるならまず、自我を壊せよ
刃物握りしめた部屋
多幸感にみちた
わたしの脳味噌には
あながあいている
ふざけた子供や紫色の蝶が
くぐり抜ける度に
額に汗が滲む

すべては夢のなか。でも、わたし不思議なこ
とに全部記憶している。何度か怒鳴る、泣き
喚くを繰り返して、驚くほど冷静な教室のな
か、ちょっと距離をとるやさしさが欲しかっ
た。あなたはわたしかもしれないし、わたし
はあなたかもしれない。あなたはカガイシャ
ですから、わたしはあなたを憎むことができ
る。鏡にうつるわたし、あなたに似てきた気
がする。

きいたこともない声で怒鳴るわたし
きっと夢のなかでは笑っている
笑いながら教室の隅で、
あなたがゆっくり
しんでいくのを
見ている